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2016-12-17

冬の日

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〈ホンの言葉のおすそ分け〉

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 冬の日

「冬陽は郵便受のなかへまで射しこむ。路上のどんな小さな石粒も一つ一つ影を持っていて、見ていると、それがみな埃及(エジプト)のピラミッドのような巨大(コロツサール)な悲しみを浮かべている。」
(『冬の日』梶井基次郎より)

檸檬と言えば、梶井基次郎、梶井基次郎と言えば檸檬というほど、梶井基次郎=檸檬のイメージがありますが、ほんのり陽射しが感じられるこんな日には、『冬の日』という短編小説はいかがでしょう。

疲労と倦怠と憂鬱を抱えた梶井基次郎の心象が冬の日の情景とともに見事に表現されています。

暗く重い小説ではありますが、文体には、冬の日に一筋の柔らかい陽射しが差し込んでくるような穏やかな透明感が溢れています。

「何をしに自分は来たのだ」
銀座を歩きながら、繰り返す主人公の言葉にふと自分も立ち止まる…。

ゆっくりとした自分だけの時間に味わいたい一冊です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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