串田孫一の著者検印
古い本を開くと「著者検印」が押してあるものを見かけます。
著者検印とは、「奥付」(本の裏辺りに書かれている本の情報)部分に押されていたハンコのこと。
発行部数の確認のため、著者が著作本の奥付などに押印または押印した紙片を貼付する制度で、明治14(1881)年に文部省が教科書の偽版(海賊版)に対する対策として検印紙を貼ったのが最初だったといわれています。
その後、昭和34年(1959)に岩波書店が検印を廃止したことがきっかけとなり、現在ではほとんど行われていません。廃止後、まもない頃は、わざわざ奥付に「著者との合意により検印廃止」と記されていましたが、今ではその記載さえ見かけなくなりました。
画像は当店で販売中の本の中で見つけた串田孫一さんの著者検印。
今、手元にある串田さんの本の中で、もっとも新しい著者検印は昭和45年のものです。検印が廃止されて10年以上経たあとも、オリジナル印を貼られていたことになりますね。
本への思いが伝わる著者検印。昭和34年以前の本に触れることがあれば一度、開いて見てください。
すべて、手作業なので、濃かったり、薄かったり、斜めになっていたり・・・
同じものがたくさん印刷される本の中で、唯一、印刷物ではない、作家さんとの「生のつながり」を感じることができるのが、このハンコかもしれません。
なお、20は銀色のシール、21は直に印刷されていますので、正確には著者検印とはいえないかもしれませんが、素敵でしたので紹介させていただきました。
書誌情報は下記の通りです。ご参考まで。
1 串田孫一随想集8 昭和33年初版 筑摩書房
2 忘れえぬ山Ⅲ 昭和37年4版 筑摩書房
3 串田孫一随想集7 昭和33年初版 筑摩書房
4 串田孫一随想集3 昭和33年初版 筑摩書房
5 串田孫一随想集5 昭和33年初版 筑摩書房
6 山Ⅱ 昭和35年初版 筑摩書房
7 古い室内楽 昭和36年初版 筑摩書房
8 山Ⅰ 昭和35年初版 筑摩書房
9 山Ⅲ 昭和36年初版 筑摩書房
10 串田孫一随想集6 昭和33年初版 筑摩書房
11 菫色の時間 昭和35年初版 創文社
12 串田孫一随想集1 昭和33年 筑摩書房
13 串田孫一随想集2 昭和33年初版 筑摩書房
14 日本の自然 昭和40年初版 光明社
15 山の組曲 昭和36年初版 創文社
16 小鳥の居酒屋 昭和34年初版 青娥書房
17 砂時計と寝言 昭和32年再版 創文社
18 花火の見えた家 昭和35年初版 創文社
19 漂泊 昭和47年初版 創文社
20 雲を憩う丘 昭和45年初版 創文社
21 積木の庭 昭和45年初版 山梨シルクセンター出版部
22 ひとり旅 昭和43年初版 日本交通公社